ご挨拶
周産期医療には困難な歴史がありました。医療事故と多数の訴訟、刑事事件に発展する事例、加熱する医療叩き報道、国の制度上の問題、医師や助産師等のスタッフ不足など数々の難問が続き、特に訴訟と医療叩き報道は2006年〜2008年頃にピークを迎え、母体と新生児の安全性の面から世界最高水準といわれた日本の周産期医療を維持できるのか大いに危ぶまれました。
この危機に対応するため、日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会は2008年に「産婦人科診療ガイドライン産科編 2008」を刊行して周産期医療の標準化を図り、国レベルでは、2009年「産科医療補償制度」、2015年「医療事故調査制度」等が開始され、これらは一定の効果がありました。
一方で現場の私たちが行うべきは、全職員のスキルアップ、施設間や職種間の良好な意思疎通ではないでしょうか。しかし、施設間や職種間の密接な協力関係には疑問を感じる場面も多く、例えば助産所と産婦人科施設との連携強化を政府が打ち出しているものの、お互いに立場を十分に理解しているとは思えません。
分娩監視装置(胎児心拍数陣痛図、CTG)に関して言えば、判断とその後の医療行為には施設間に差異が見られ、スタッフ間の温度差も解消されていません。2011年には「産婦人科診療ガイドライン産科編 2011」で分娩監視の方法が詳細に規定され、「同2014」で内容強化、「同2017」では一層の充実が図られましたが、周産期医療にかかわる全員が十分に習得しているとは言えません。更に2022年頃以降の愛知県内の偶発事例を見ると、CTGの判読とその後の医療行為に疑問を感じる例の増加が見られ、現場の分娩監視に関する意識が低下しているのではないかと危惧されます。周産期に関わる医療裁判はピークに比べて大きく減少したものの、その中でCTGへの関心が薄れることは新たな危機と思います。
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周産期医療の将来が最も危ぶまれた2008年、多くの課題に対応するためには周産期医療に携わる医師、助産師、看護師が施設と職種の壁を越えて率直に意見交換を行える場が必要との思いから、私たちは愛知分娩監視研究会を発足させました。研究会発足にあたっては、愛知県内4大学、多くの医療施設、愛知県産婦人科医会、愛知県助産師会、関係企業のご協力のもと、また関東を中心として長い歴史を持つ日本分娩監視研究会からのご教示を得て発足することができました。愛知県には既に総合周産母子センターを中心としたシステムがあり、各種教育活動が行われ、縦の線として重要な機能を果たしています。加えて各施設間の横の連携を強化するシステムとして当会が何らかの貢献ができましたなら望外の喜びです。今後ともよろしくお願いいたします。
愛知分娩監視研究会 世話人会
